ペットロスエッセイ
ペットロスエッセイ


第3回「ペットロス」エッセイコンテスト
選 評

≪第3回コンテスト―総評≫

言葉は人を慰め、人を勇気づける。言葉はすばらしい。言葉の泉によって人はまた悲しみからも解放される。『ペットロス』の悲しみや辛さを書くことで、一所懸命に書いていくことで、少しでも癒され、乗り越えられる。そうした機会となればと創設された「ペットロス・エッセイコンテスト」。今回もいっぱいの愛情と感謝が詰まった、心に迫る作品ばかり。選考には、大いに悩まされた。

ペットロスの心情がよく表現されているもの、またエッセイとしてとても優れているもの。これが選評の原点だが、現代社会が抱える現実や問題をあぶり出す社会性や時代性、また心を揺すぶるドラマ性といった点も重要な評価ポイントとなった。

特選の『つながり』は、動物病院で愛犬の最期を看取った日、壁にある捨て犬、捨て猫「飼い主募集」の貼紙を目にし、・・と人と動物の心を通した命のつながりを深い愛情と抑制の効いた文章で綴った秀作だった。

入選・特別賞『大切な後悔』は、小学生の時に自分の不注意で死なせたハムスターへの、涙が枯れるまでの後悔と自責の念。そして母の言葉の深い意味。心の成長が素直な文章を通し伝わってくる、心が揺さぶられる中学生の作品だ。

入選作『ふぐの弔い』は、夫の釣ってきた海の魚を家の水槽で飼い始めた老夫婦の温かいまなざしと会話。なにげない日常をともに生きるすてきな夫婦愛がにじみ出ている佳作だ。

同『手のひらに乗る幸せ』はDVや闘病など辛く、重い体験を乗り越え、ヘルパーとして歩き出すまでの心の支えとなった愛猫への、感謝と哀悼が綴られた印象深い作品。

主催のセブンシーズ・コンサルタンツの理念と熱意を受けて来年の第四回の実施計画もすでに進められている。テレビ番組などからの取材や問い合わせも増えている。

ペットロスという言葉も浸透し、コンテストの趣旨や実績もかなり認知され評価されてきたという確かな手応え。ペットロス、その悲しみ、絶ちがたい悔いや自省、そして立ち直り、追悼、哀悼から新しい出発ちへと向かう、ともに生きてくれたことへの深い感謝とそして充実感。人と動物たちとの心と命のつながりの機会として、来年はまた、どんな作品が寄せられるか。書くことによって、言葉を紡ぐことによって、悲しみから解放され、新しい生きる力をいただく、創り出す、もっともっとそんな機会にと願い、期待している。

選考委員長 引地 幸市(メディア・プロデューサー)



<家族想いの動物たち>

毎年一編一編の作品を読んでいると、どの文章にもあふれる想いが伝わってきます。もういなくなった動物たちのチカラや、ペットたちが創ってくれた絆の偉大さに驚かされます。夫婦で動物病院を始めて32年、ラジオで文化放送『宏子先生の動物クリニック』のパーソナリティは6年になりました。動物たちの声と毎日接することができる立場にいる私たち獣医師にとって、ペットロス・エッセイコンテストにちりばめられている言葉は、心に浸み込むことばかりです。ターミナルケア(終末医療)の現場や心のサポートなど、できることをさらに見つけていこうと思いました。

「天国日帰り旅行」があったら、動物たちに逢いに行きたいですね。

委 員 清水 宏子(獣医師・エッセイスト)



<第3回コンテスト 審査を終えて>

今年も応募作品の審査を努めさせて頂いた。

ここ一年で世界は一気に低迷の時代を迎え、何となく重苦しい雰囲気が蔓延している。

そういう背景があることで、一方では人間の生き方や、自然への回帰、癒し等が改めて見直されている時代でもある。

今年の作品は昨年にも増して、ある意味こうした時代、世相に影響を受けていると感じられた。

愛するペットとの別れ、家族の一員としての動物達との交流等の想い出が深く切々と綴られていることは言うまでもなく、選ばれたどの作品も、もう一つのテーマが描かれていることが読み取れる。

それはペットを失った悲しみや虚脱の結果から、「家族との関係」や「社会との拘わり方」等、自分自身への気づきが生じたことに二重の感動を覚えた。ペットを通じての老夫婦の淡々とした日常、家族の絆、反省からの学びや生きるバイタリティとは。等などまさしく人間や社会の本来のあり方などへのメッセージであると感じた。

委 員 仙波 英正(元(財)日航財団企画部長・Japan Eco Kids Labo 代表)



今回も中学生から80歳代の高齢者まで、全国から実に多彩なエッセイを多数応募いただき、まことに有難うございました。審査員の一人として厚く御礼申しあげます。

今年の特徴としては、中高年の応募者が従来よりも多かったこと、ペットの痛ましい交通事故死がかなりの数にのぼったこと、そして何よりも、今の難しい社会のなかで、ペットが、励まし、癒し、そして救いになっていることにあらためて強い印象を受けました。

6人の審査員は、それぞれ、経歴、価値観が多様です。それだけに入選作品の選考では、個々の作品をめぐって率直な意見交換を行って多数決で進め、全会一致は皆無でした。なお、私は、作品としての完成度をベースに、読後の感銘の深さ、さらに時代性、社会性も考慮して評価しました。

最後に、毎年数十万頭もの動物が痛ましくも処分されるなかで、応募作品中のペット達はみな何と幸せであったかと感銘を受けたことを申し添えたいと思います。

委 員 平井 東幸(東京産業考古学会副会長、元嘉悦大学教授)



今回で、3回目の作品評となった。

ペットロスの対象が、多岐に亘ったのが、今回の特色の一つであった。

生き物を飼った時から、我々は、ペットロスから逃げられない。そして、ペットとの別れの瞬間まで、それを直視せず後悔と別離の悲しみを背負うこととなる。

しかし、今回の作品群は、その負の思考を「文字で描く」ことで見事にペットロスを克服している。

その作品の力強さと、克服の過程は、共感と感動を呼ぶ。

来年、この感動に再会したいと思う。

委 員 町野 洋一(メディア・プロデューサー)



今回、選考会に初めて参加させて戴き、応募作品の行間から溢れ出る様々なエナジーに圧倒されました。特にペットへの深い愛情と温かな眼差し、哀しく辛い経験や喜び、惜別、そして癒しなど、正しく147通りの追体験・疑似体験をさせて戴きました。

沢山の素晴らしい物語をありがとうございました。

遙か昔、古代エジプトの人々が猫を愛していた事はよく知られています。またこの日本でも、縄文時代の遺跡から所謂「縄文犬」の化石が見つかり、江戸期の萩藩毛利家屋敷跡(現六本木ミッドタウン)からも、小型犬の化石が出土した現場に実際立ち会ったことがあります。そんなエピソードを引くまでもなく、洋の東西を問わず、また時代を経ても、人間とペットたちの良好な関係は脈々と受け継がれ、更には混沌とした現代だからこそ、人は益々、無垢なる魂を持つペットたちに癒しを求めている、愛すべきその存在がフェードアウトしてしまった後に訪れる「心の景色」、ペットロスはまさに今という時代が生み出した陥穽、そんな時代性をも強く感じさせられる作品群でした。

多彩な物語は、何れも、こちらの感性に温かく、また力強く語りかけてくる「生への賛歌」であり、その多くが、「ペットとの確かな愛と信頼の物語」だったことは言うまでもありません。

次回もぜひ奮ってご応募下さいますようお願い申し上げ、エッセイをお寄せ下さった皆さまの人生が、ペットと共に、より豊かで幸多き日々となりますよう祈念しつつ、玉稿のご投稿に心より感謝しお礼申し上げます。

事務局 上野 さち江(セブンシーズ・コンサルタンツ)



《選考委員紹介》

第3回 『ペットロス』エッセイコンテスト 選考委員紹介(敬称略)

委員長 引地 幸市 メディア・プロデューサー
元文化放送理事、開発部長
委 員 清水 宏子 獣医師
エッセイスト
委 員 仙波 英正 元 財団法人 日航財団企画部長
JAPAN ECO KIDS LABO 代表
委 員 平井 東幸 元嘉悦大学教授
東京産業考古学会副会長
委 員 町野 洋一 メディア・プロデューサー
元テレビ東京 プロデューサー
委 員 上野 さち江 セブンシーズ コンサルタンツInc.
ディレクター
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