ペットロスエッセイ
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セブンシーズグループ
第4回「ペットロス」エッセイコンテスト

≪第4回コンテスト―総評≫

生き物にとって死は免れることのできない定め。誰もがそう覚悟はしていても、いざとなると思いもかけない形で悲しみは噴出してきます。飼い主にとってはペットの死は家族同様にかけがえの無い命を喪うこととであり、その悲しみは筆舌に尽くせないくらいに深く、辛いものとなります。自責や後悔の数々。思慕や追慕の日々。年月。長い長い、長い時間がかかるものです。

四回を数えた今年も、20代から80代まで実に幅広い年代層の方々から、昨年を大きく上回る多数の作品を寄せていただきました。毎週、事務局から作品のコピーの束が届くたびに一作品一作品、手に取り読み返しながら、立ち止まりながら、読ませていただきました。ペットとともに過ごした日々の楽しいできごと、癒された数々の思い出。けれど、喪って知る言いようの無い悲しみ、痛み、自責、自省。やがて訪れる昇華、こころの平安。

どの作品もどの作品も深い愛と感謝で綴られた、胸に迫り心に沁みるものばかりでした。

特選作品「ポッキーの桜の木」は、子どもたちと犬とハムスターとの暮らしが、庭の桜の木の存在と交差して、読み手のイマジネーションを強く刺激するエッセイとなっており、複数の審査委員から映像化を促す声も挙がった完成された作品でした。

入選作品「ミミドリーム」は、愛猫に向けて一年に一冊づつ書き溜めた七冊のこころの記録。ペットロスを克服、解決するための優れたお手本として広く読んで欲しい作品です。

同「ウィルと暮らしたこと」は、愛犬への深い愛情と愛惜、また常に死と向き合う医師としての心構えや心配りなどが、抑制の効いた知的な文章の中によく描かれています。

同「チィがくれた倖せな時間」は、22年間をともに暮らした愛猫の個性や生態を実にいきいきと描き出し、読み手の心に深い共感を呼ぶ佳作でした。

特別賞作品「ちくわ」は、死に向かいかけている15歳のワンちゃんの気持ちを「ちくわ」という意外な食べ物を配しながら、斬新な切り口と優れた表現力で描き、印象深い作品となっていて、選外を惜しむ声が上がり、今回始めて特別賞が生まれました。

一次選考を経て最終選考へ。審査委員一同、“ペットロス・エッセイ”への理解や関心が着実に進み、また広く浸透しているというたしかな手ごたえを感じながらの審査会でした。

来年またどんな作品が生まれるのか。主催者と共に委員一同今から心待ちしています。

選考委員長 引地 幸市(メディア・プロデューサー)



見えない応援団

今年で4回目ですが、毎年毎年、ペットとの絆を確認できる力作が多くなっています。20歳を越える長寿の動物も増えて、獣医師として大変うれしく思います。また、多頭飼育のご家庭も多く、ペットロスの時、もう一匹のペットが、なぐさめてくれる一番の味方になって、言葉以上のものを、プレゼントしてくれています。

どの作品の行間にも、温かさ、いとしさ、せつなさがあふれている文章に、学ぶことがたくさんあります。これも見えない応援団の動物たちからの贈り物みたいです。

ペットロス・エッセイコンテストが、さびしさをありがとうに変えていくお手伝いの一端になれるといいなぁと思います。

委 員 清水 宏子(獣医師・エッセイスト)



第四回ペトロスエッセイコンテスト審査を終えて

今年も審査の一員に加えていただいた。自分自身の学習のためにもこのペットロスエッセイを読むことを楽しみにしている。

なぜならば、それらの文章からその時々の時代背景や少しずつ変わっていく価値観などが感じられるからだ。昨年は時代の低迷や閉塞感を持ちながらのエッセイが多かったが、今年は、これまでになくよりエッセイらしい、読み手にペットロスの悲しみや辛さ的な通常の状況説明ばかりでなく、より深く心の機微を淡々と書き綴る、「自立」や「自律」へ変化していく様など。自身で前に進む力、心の懊悩にはペットへの思いを持ちつつ生きていく、人間と動物との関係が、仮にペットを飼った経験が無い人達にも共感を与える内容や洗練された知的な文章が目立った。

こうしたコンテストが多くの人々に感銘を与え、人間社会への発信となれば、動物の存在や動物の死も捨てたものではなく、意味のある本物の価値を持つことになるのではないかと感じた。

委 員 仙波 英正(元(財)日航財団企画部長・Japan Eco Kids Labo 代表)



今年も10代の若い方から80歳代の方々まで、全国から実に多彩なエッセイを多数応募いただき、まことに有難うございました。

多数の優れた作品をどのように公正にしかも、多面的な観点から評価するかは、毎年頭の痛くなるほどことですが、個々の作品をめぐって従来にもまして率直な意見交換を行って多数決で進め、全会一致は皆無でした。それだけ、審査員の価値感が多様であったということです。

なお、私は、作品としての完成度をベースに、社会的メッセージ性、つまり、戦争中に処分されたペットに因んだ平和の尊さ、苦しむペットを安楽死させる飼い主の苦悩と自責、ペットは公共の動物愛護センターから、といった点も考慮して評価しました。しかし、今年もそうした作品は入選に至りませんでした。このコンテストも4年が経ちましたが、このあたりで、その意義を問いなおす必要があると感じた審査会でした。

委 員 平井 東幸(東京産業考古学会副会長、元嘉悦大学教授)



最終候補5作品、それぞれ個性豊かで趣向をこらし、好感が持てた。

今回、荒削りではあるが、エモーショナルで破天荒な魅力を持つ「ポッキーの桜の木」と「ちくわ」の2作品に出会えたことは幸運であった。

私はこれらの作品のあと押しをして、賞を争うことになった。

前者はリリカルで、将来映像化のチャンスが訪れたら、充分その要素を備えた作品である。

後者は受賞者に、何らかの賞揚が必要という意見により特別賞となった。

委 員 町野 洋一(メディア・プロデューサー)



 いとしい一つの「命」を失うという現実は、自身が意識するしないに関わらず、人の心に想像を超える大きな負荷を掛けるようです。「文章セラピー」という言葉をなにかの本で読んだ記憶があります。人が大きな喪失感と欠落感に絡め取られたとき、立ち直るメソッドの一つとして「文章を書く」という行為が確かに有効であり心に効く「お薬」となりうる、癒され、前向きに生きていく力となるんだと、173作品を繰り返し読みながら昨年に続き今回も強く実感いたしました。また最後まで選考に迷うほど、秀逸な作品が多く存在したことも印象的でした。

沢山の素晴らしい物語のご投稿に心よりお礼申し上げますと共に、次回もぜひ多くの皆さまが奮ってご応募下さいますよう心よりお願い申し上げます。

ペットと共に皆さまの人生が素晴らしい日々となりますように。

事務局 上野 さち江(セブンシーズ・コンサルタンツ)



《選考委員紹介》

第4回 『ペットロス』エッセイコンテスト 選考委員紹介(敬称略)

委員長 引地 幸市 メディア・プロデューサー
元文化放送理事、開発部長
委 員 清水 宏子 獣医師
エッセイスト
委 員 仙波 英正 元 財団法人 日航財団企画部長
JAPAN ECO KIDS LABO 代表
委 員 平井 東幸 元嘉悦大学教授
東京産業考古学会副会長
委 員 町野 洋一 メディア・プロデューサー
元テレビ東京 プロデューサー
委 員 上野 さち江 セブンシーズ コンサルタンツInc.
ディレクター

 

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