ペットロスエッセイ
ペットロスエッセイ


第1回「ペットロス」エッセイコンテスト
審査員推奨作品

― 審査員推奨作品 ―

「苦しんでいるあなたへ」

群馬県みどり市
峯岸 さち子 (みねぎし さちこ) 41歳

ペットロスの悲しみの深さは人それぞれ違うもの……。

そのことを知ったのは今から二十年近く前、愛犬“ハッピー”が、天に召された時でした。

シェットランド・シープ・ドッグの仔犬、“ハッピー”は室内犬第一号として、私が中学二年の時に我が家に迎えられました。そして、十四年と数ヵ月後の十二月三十一日早朝に、私たち家族の元を旅立ったのでした。

主に散歩担当だった父の表情からは、“ハッピー”の死に対する心の動きは何も感じられませんでした。同様に、犬嫌いの祖母も普段と同じで変わったところは全く見られませんでした。母は時どき泣いていたようですが、後にハッピーのムスメ“アラン”が亡くなった時の方が落ち込み方が激しかったように思われます。トリマーとして動物病院で働いていた妹は、とてもハッピーを可愛がっていました。でも、看護助手として命と向き合う事も多かったのか、“死”に対する心構えを日頃から持っていたのでしょう。誰よりも冷静でいたように思います。そして、私は……、寝起きを共にするなど、一番濃密な接触をしていたことと、腕の中で最後を看取ったこともあり、ダメージは人一倍大きなものでした。

血のつながった五人でさえ、一人ひとり受け止め方に温度差があったのですから、私は誰にも心の内を曝け出すことはしませんでした。そう、本能的にペットロスの傷の深さの違いを感じていたのかもしれません。

だから、ペットロスから立ち直る方法も人それぞれ違うのかもしれません。でも、ここから先は、私がどのようにして悲しみの日々から脱出したのか、私個人がした事について話していきます。(今闘っているアナタへのお役立ちヒントとなれば幸いです。)

した事、その一。

悲しくなったら我慢しないで思いっきり泣く(涙を流す)こと。ただし他人[ひと]さまには迷惑をかけない。

涙を我慢するのは体にも毒だし精神的にも良くないってことは、だいぶ後になって知ったのですが……、一時間も二時間も連続で涙が出続けることはまずありません。泣きたくなったら五分から十分、感情に任せて思いっきり涙を流す。そうすることで自然に泣く回数は減り泣く時間も短かくなっていきました。

泣きたい時は泣く……。このことは心にも体にもとても大切なことのように思います。

泣くことで心の均衡を取り戻した私は、泣ききることで、今度は心の中が空っぽになってしまったことに気付きました。

そこで……

した事、その二。

心の内、深くをみつめて、そこに溜め込んでいたものを形あるもの(私の場合は文章と絵)にして全て吐きだすこと、でした。

これはペットロスから脱出する上で一番重要な役割を果たしたように思われます。

心空っぽ状態になっていた私は、まず時おり浮かんでくる“ハッピーとの思い出”を紙切れやノートの端にメモったり綴ったりしました。そんなとき、新聞広告で、『ペットとの思い出募集』という、四百字詰原稿用紙五枚ほどのエッセイを募集する広告を見つけ、書き溜めてきたものをまとめ上げ応募することにしたのでした。また、それと前後して、『ペットのイラスト募集』という広告(こちらはハガキでの応募でした。)を見つけ、ハガキ一枚という手軽さもあって、これにも挑戦することにしたのでした。

(描)くことに集中したおかげで、“ハッピーとの思い出や結び付き”などを、もう一度見直すことができたのか、それまでとはくらべものにならないほど心が軽くなっているのが応募後にわかりました。もしかしたら、やり遂げたという達成感と満足感とが、心に空いていた大きな穴を埋めてくれたのかもしれません。

結果は……、どちらも落選に終わりましたが、私の心のリハビリには、大いに役立ったことは太鼓判ものの事実です。

今もし、大切な命を亡くして悲しみに沈んでいるなら、その気持ちをムリに押し込めようとしないで下さい。たとえ自分一人で抱えることになったとしても、時が必ず解決してくれますから。

心が落ち着いてきたら、新しい“トモ”との出会いを求めてペットショップへ行ってみるのもいいと思います。

一度、大切な“命”を失った経験を持てば次には、さらによい関係を“短命のトモ”と築けると思うから。

失うことを恐れないで下さい。カレらは悲しみよりも、たくさんの大切なことを与えるために私たちの元を訪れるのですから。

余談ですが……、今、私は室内犬三代目シーズ犬、ポッキと幸せに暮らしています。


《第1回コンテスト推奨作品一覧(6篇)

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