ペットロスエッセイ
ペットロスエッセイ


第2回「ペットロス」エッセイコンテスト
審査員奨励賞

― 審査員奨励賞 ―

「小さな命との出逢い」

茨城県龍ヶ崎市
大西 杏奈 (おおにし あんな) 13歳

ある六月の事…。我が家に新しい家族の一員がやってきた。それは、小さくてとても可愛いらしいモルモットだった。名前は、「ジャック」。私の兄が名付け、家族全員が賛成だったので、ジャックになった。今まで、動物を飼った事のなかった幼児の私にとって、これからの生活が楽しみで仕方なかった。

ジャックの世話は、私と兄の担当になった。毎朝、ゲージの中の掃除をしてから、幼稚園に行く事が日課になっていた。私にとってジャックは、可愛いく心をいやしてくれる天使のような存在でもあり、小さい体でも、家族のみんなに元気を与えてくれる力を持っていて、太陽のような存在でもあった。

幼稚園から帰ってくると、ジャックをゲージから出し、庭でたくさん遊んだ。きれいな桃色の鼻と真っ白の歯を動かし、「フィーフィー」と鳴き声を出しながら、喜んで走りまわっていた。私が、「ジャック!」と声をかけると、走ってかけよってきてくれるのを見て、いつもうれしくなっていた。

私が小学一年生になった頃、我が家にまた新しい家族の一員がやってきた。ビーグル犬の「リュウ」だ。リュウが家にやって来てからは、私がジャックの担当、兄がリュウの担当になった。ジャックやリュウは、私にとって妹や弟のようなものだった。

リュウは、わんぱくな男の子で、元気に走りまわったりして、まだ全く落ち着きがなかった中、ジャックは始めの頃より、だいぶ落ち着いてきていた。ジャックやリュウが、一つ一つ大きくなっていくにつれて私も、一緒に大きくなっていった。

ジャック

私が小学四年生になった頃、ジャックは、もうおばあちゃんになっていた。おばあちゃんになっても、元気だったジャックにある変化が起きていた。老衰になっていたのだ。自分で排便が出来ず、肛門に便がたまってしまい、兄が絞り出していた。その姿は、とても痛々しく衰弱していた。黒く輝いていた目も色が変わり、うつろになってきていた。心の奥では、死という、認めたくない現実が近づいてきている事を悟っていた。

今思うと、ジャックは、いつからか目が見えなくなっていたかもしれない。きっと声を聞いたり、コミュニケーションによって、自分が生きていることを実感していたのだろう。

そして…。四月二十五日、ジャックは息をひきとった。ジャックは、横たわり、上をむいている目を開いたまま、亡くなっていた。まるで家族のみんなを見ているかのように…。

六年間のジャックの生涯。長いようで短かった六年間だった。けれど、とても楽しかった。次々によみがえってくるジャックと過ごした日々。亡くなってから改めて気付いた事。ジャックは、私にとって、かけがえのない存在だった。たくさん勇気や元気をもらった。ジャックと過ごして学んだ事は、たくさんある。動物にも心があるという事。そして、なにより命の大切さを学んだ。ジャックはいつまでも家族みんなの心の中に生きている。私は、ジャックに言いたい。「楽しい日々をありがとう。」と。

ジャックが亡くなってから私は、毎日している事がある。それは、ジャックへのあいさつだ。学校へ行く時、「ジャック。言ってくるね!」 学校から帰ってくると、「ただいま」 寝る前には、「おやすみ。ジャック。」

これは、毎日欠かさずに四年間続けてきた。もちろん、これからも続けていくつもりだ。

それから、ジャックが亡くなってから、変わった事がある。それは、リュウが、なにかのけじめをつけたかのように、落ちついた事。とてもおりこうになった。きっとジャックが「リュウ、後は頼んだよ!」と、リュウにバトンを渡したのだろう。

あのわんぱくだったリュウも七歳になった。月日が経つのは、とても速いと感じた。リュウは、元気に毎日を過ごしている。リュウはなにより、ご飯を食べる事と散歩が楽しみのようだ。しかし、リュウにも必ずジャックと同じ運命はやってくる。だからこれからも毎日、楽しんでリュウとも過ごしていきたい。

動物を飼うという事は、家族が増える事と同じだ。動物も人間と同じように心を持っている。私は、ジャックの死を乗り越えてきたからこそ、リュウとも悔いのない毎日を過ごそうと思えるのだと思う。実際、リュウも一度、病気にかかった事があった。けれど、手術をして今は、元気に毎日を過ごしている。まだまだこの先も元気にいてほしい。大切な家族の一員だから…。

小さな命との出逢いで大きなものを学んだ。


《第2回コンテスト入賞作品一覧(6篇)

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